学校だより

校長 冨岡尚生

10月16日の公開以来、わずか3日間で興行収入46億円を突破し、動員数は342万人を記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。歴代の日本映画の興行収入でも上位に入ることは確実で、今一番の日本のトレンドです。過去のアニメ作品を挙げると、第一位は「千と千尋の神隠し」(2001)で2352万人が観て、308億円の興行収入をあげたそうです。第二位は「アナと雪の女王」(2014)で2003万人が観て、252億円。第三位は「君の名は。」(2016年)が続いています。

この「鬼滅の刃」、どうして流行っているのか、興味深いアンケートがあります。鬼滅の刃がおもしろい理由として、キャラクター、ストーリー、世界観、設定が挙げられています。そこで、この作品の世界観に着目してみました。

舞台は大正時代の日本。主人公の竈門 炭治郎(かまど たんじろう)は、亡き父親の代わりに家族の大黒柱となり、炭を売りながら生計を立てて暮らしていた。ある日、炭治郎は町まで炭を売りに行って家に戻ると、家族は無残にも「鬼」に惨殺されていた。そして唯一生き残っていた妹の禰豆子(ねずこ)は、鬼に変容を遂げてしまっていた。炭治郎は、禰豆子を人間に戻すため、また家族を殺した鬼に復讐するため鬼狩りへの道へと進む物語です。

全編を通して、家族愛と兄弟愛が描かれています。主人公、炭治郎の家族が鬼に惨殺され、かろうじて鬼となって生き残った禰豆子は、本能的な鬼の習性から炭治郎に襲い掛かりますが、炭治郎は決して妹を見捨てることはありません。禰豆子に、「頑張れ」と何度も何度も呼びかけます。自分の大切な家族は、命をかけて守るという覚悟があります。また、敵であるはずの鬼も例外ではなく、元々人間だった頃は大切な家族がいて、死ぬ直前には走馬灯のように昔の思い出がよみがえり、幸せだったころの記憶に涙しながら、朽ち果てていく様子が描かれています。

この作品の世界観に、共感が多いのは10代と40代の世代です。この親と子の世代に共感が多いことは、偶然ではないと思います。働き盛りの親、独り立ちをしていけるようになった子。映画館に別々に行っても、双方が涙するシーンは同じ場面です。

「死ぬ」とか「殺す」とか過激な言葉が飛び交う作品ですが、家族愛はもちろん、優しさや自己肯定感、仲間の大事さ、努力、そして悲しさから立ち上がる心の強さが随所に描かれています。

先週、小学2年生のオンライン授業に参加しました。国語では「お手紙」を学習していました。ご家庭でも子どもたちの音読に、保護者の皆様が聞き役になっていただいていることと思います。アーノルド・ローベル作の「ふたりはともだち」にある、5つのお話の最後の作品です。仲良しの「がまくん」と「かえるくん」のふたりの間で繰り広げられるエピソードは、可愛らしくて、濃くて、ちょっぴり切ないものです。ふたりのキャラクターや、それぞれのやり方でお互いを思いやる様子が、この作品の世界観となっていきます。5つめの「お手紙」だけではなく、他の作品を読み、繰り返し表現される作品のテーマに気付くことによって、物語の世界観はどんどん広がり深まっていきます。

どんな作品でも、親子が一緒に読み味わい、世界観を共有できる。こんな素晴らしいことはないと思います。

※映画「鬼滅の刃」は、日本ではPG12の作品となっています。

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