学校だより 11月21日

学校だより

校長

オンライン学習で、子どもたちのグループ討議が多く行われるようになってきました。中学部ではすでにグループの話し合いを授業の柱の1つにしています。小学部でも自分の意見や考えを発表する。友達の意見に耳を傾ける。1つの意見としてまとめる。これらの活動を授業の中で行うことが増えてきました。(ZOOMではブレイクアウトルームと呼ばれている)アプリの拡張機能を使い、少人数で、与えられた時間で話し合いを行っています。しかし、子どもたちは自分の考えや意見を一生懸命伝えているのですが、話し合いの活発さが出てきません。

何か原因があるのでしょうか。

「ためして ガッテン!」というNHKの番組をご存知でしょうか。先日の放送で興味深い謎解きが出てきました。

ビデオ通話は、パソコンやスマートフォンを使い、離れた人たちと映像や音声で簡単につながることができる便利なコミュニケーションの方法です。しかし、なぜか「議論が深まらない」「盛り上がらない」といった声があります。

実はその大きな原因の1つが、ビデオ通話を行うパソコンなどの構造にありました。それは「画面」と「カメラ」が違う位置にあること。相手の姿を見ようと「画面」を見ると「カメラ」が見られず、互いの目線が合わないのです。このことによって、コミュニケーションにおいて大事な2つのものが失われていることが分かりました。

1つ目は「うなずき」。相手に同意を伝えたり、会話のタイミングをはかったりする仕草です。目線が合わずアイコンタクトができないと、ビデオ通話ではうなずきの数が大きく減ることが実験で分かりました。2つ目は「ジェスチャー」。私たちが頭の中で言葉を探したり、流暢にしゃべったりすることを、実は手などの動きが助けていたのです。これも、相手のジェスチャーが見えなかったり目線が合わなかったりすると、自然と少なくなってしまうのです。

そんなビデオ通話の弱点を解決するユニークな方法がある大学で行われていました。それは会議や通話の中に、会話をちゃんと聞いて心からうなずく、「うなずき担当」を1人でも設けること。ビデオ通話では、ついついうなずくのを忘れがちですが、1人がきちんとうなずくだけで他の人がうなずくようになったり、会議に参加している全体の人たちの一体感が増すように感じられたりするのだそうです。実際にある会社で試してみると、社内会議の議論の質が深まったり、みんなの参加感が増したりしたという報告があるそうです。うなずき担当は、相手の話をちゃんと聞いて、心を込めてうなずくことがポイントです。

いかがでしょうか。うなずきながら聞く。ご家庭では普段の会話に、オンラインでは友達の話にうなずくことをお互いが始めていけば、話が深まり、盛り上がることは間違いないそうです。

授業中、カメラをオフにして参加している子がいるんですと、先生方から残念な報告が上がってきます。先生も大変心配になります。カメラをオンにして、友達や先生の話に大きくうなずいて、自分の考えや意見は、ジェスチャーを交えてカメラを見ながら発表してみましょう。せっかくのオンライン、全集中で取り組みましょう。オンライン学習は、一人一人の参加が基本です。

私事ですが、バンクーバー総領事館や学校運営委員会の皆様のおかげで、ようやくバンクーバーに渡航することが決まりました。まもなく出発します。その後の隔離や生活が落ち着きましたら、学校だよりを再開させていただきます。それまでしばらく休ませていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。

学校だより 11月14日

学校だより

校長

小学5年生の国語の授業。「枕草子」でした。枕草子は、平安時代中期、清少納言(せい しょうなごん)により執筆された日本最初の随筆です。

清少納言は、一条天皇の中宮定子に993年頃から1000年頃までとして仕え、本名は清原 諾子(きよはら の なぎこ)とされています。

保護者の皆さんも、

『春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。』を、学生時代に暗唱された方も多いのではないでしょうか。

授業では、

「秋は、夕暮。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。」

の現代語訳をみんなで考え、秋の夕暮れの様子を味わいました。

どうして、古典を勉強するのでしょうか。日本の文化や伝統について関心を深める契機にもなると、よく言われています。私は、日本語のもつ美しさ、巧みさを味わうことだと思います。

『春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。』

NHKの語学番組では、この英語訳を次のように紹介していました。

For spring, it is the dawn that is most beautiful.

The skies on top of mountains become lighter and lighter with the rising of the sun.

The long thin clouds that turn light purple are a sight to be enjoyed, too.

49文字の日本語。40語の英文。言語の特徴がよく出ています。

英文を通して、原文を読むのも、日本語を味わう手法になると思いました。

「冬はつとめて」では、その特徴がよく分かります。

「冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶(ひおけ)の火も、白き灰がちになりて、わろし。」

現代文では、

「冬は早朝。雪が降り積もっているのはもちろん、霜が真っ白に降りているのも、またそうでなくても、はりつめたように寒い朝、火などを大急ぎでおこして炭火を部屋から部屋へ運んでまわるのも、いかにも冬の朝らしい。昼になってだんだん寒さが緩むと火鉢の炭火も白く灰をかぶってしまって間の抜けた感じだ。」となります。

英文の訳は、

“For winter, it is the early morning that is most beautiful.

It is beautiful when snow has fallen during the night.

But splendid too when the ground is white with the frost.

But even when there is no snow or frost, the cold makes you feel that it is a winter morning.

People rush to start a fire on those chilly mornings.

Then they run from room to room carrying hot charcoal for the stoves.

It’s all very winter like.

But the morning cold starts to disappear around noon then you find that the charcoal in the stoves has turned into white ashes

that looks a little foolish.”

英文のリズムの良さと相まって、クリスマスシーズンの幸せな忙しさのような情景を思い浮かべます。早朝に宮中で忙しく働く人々の衣擦れの音まで聞こえてきそうな様子が感じ取れます。清少納言の研ぎ澄まされた感性は、余すところなく作品に投影されています。

今から一千年以上も前に書かれた日本の古典が、こんなに親近感あふれるものであったことに驚きます。

日本では、第3波とみられる感染の広がりが警戒されています。新規感染者の過去最多となる道府県が増えています。バンクーバーの皆様、どうかご自愛ください。

学校だより 11月7日

学校だより

校長

子どものちいちゃんは、お父さんから「かげおくり」を教えてもらいました。

「かげおくり」とは、10数える間地面の影を見つめて、すぐに空を見上げると影法師(残像)が空に映って見える遊びです。

翌日、体の弱いお父さんは戦争に行ってしまいました。

ちいちゃんは毎日、かげおくりをして遊んでいましたが、戦争が激しくなって次々に戦闘機が飛んでくるようになりました。

ちいちゃんの楽しい遊び場の空は、怖いものに変わってしまいました。

ある日の夜に、激しい空襲が起きました。

風が熱くなり、炎の渦が追いかけてきました。

ちいちゃんは逃げる途中でお母さんとお兄ちゃんとはぐれてしまい、一人ぼっちになってしまいました。

一人ぼっちのちいちゃんは防空壕で寂しく一晩寝ました。

やがて朝になって、ちいちゃんがかげおくりをして空を見上げると、4つの影がありました。

一面の空の色。ちいちゃんは、空色の花畑の中に立っていました。

ここは、空の上よと、ちいちゃんは思いました。

そのとき、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、笑いながら歩いてくるのが見えました。

ちいちゃんは、きらきら笑いながら、花畑の中を走り出しました。

夏の初めのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空に消えました。

小学3年生が学習している「ちいちゃんのかげおくり」のあらすじです。

戦争を題材にしている作品です。物語の至る所に、戦争の悲惨な様子が書かれています。

「空に吸い込まれ、花畑の中で家族と会えたちいちゃんは幸せだろうか」、

先生も子どもたちも一緒になって考えます。

子どもたちから見た幸せ、不幸せと、ちいちゃんの目線からの幸せ、不幸せがあります。子どもたちは、その根拠となる言葉を本文から必死に探します。

やがて、子どもたちは、ちいちゃんの置かれた状況が悪くなる一方で、ちいちゃんは、そのことに気付くことなく、だんだんと幸せを感じるようになる。

そのずれを悲しいと感じるようになります。

読みは、言葉に出会わなければ深まりません。

でも、一人で深めることは簡単なことではありません。

どれだけ読んでも気付かないことは多いです。

そういうとき、仲間の考えを聴いて、はっと気付くことがあります。

だれもがはっきりしてなかったことが、仲間といろいろと話し合ううちに気付くこともあります。

読むことは、一人一人の作業です。

最終的には、自分はどう読むのかに行き着くのですが、

仲間と共に読み合うということは、言葉との出会いを豊かにするうえで欠かせないことだと思います。

それは、それぞれの子どもが互いの読みを聴き合いながら、自らの読みを探り続ける学びになるからです。

深まりゆく秋です。本を読み、たくさんの言葉と出会いましょう。

学校だより 10月31日

学校だより

校長

東京のある小学校、中学校の先生と話をする機会がありました。最近のコロナ対応について聞いてみました。(学校のルールは、都市によって、地域によって異なります。)

まず小学校です。その小学校では、登校時刻は学年によって差を設けて、重なりを少なくしました。昇降口前に待機場所も作られ、時間になるまで児童は静かに待ちます。教室に入る順番も決められ、大勢の児童が通過する下駄箱も配置をし直し、動線ができるだけ重ならないようにしました。教室にランドセルを置くと、すぐに手洗いに行きます。蛇口は1つおきで、並ぶ場所も決められています。教室の窓は開け、エアコンをつけて、常に換気をしています。

机は1つずつ間隔を最大に取り、並べています。給食の配膳は、当番で行うようになりました。おかわりは、先生がよそいます。全員、話をしないで前を向いて食べます。休み時間は、遊べる学年を順番に決めています。遊ぶと言っても、ラジオ体操をしたりダンスをしたりしています。掃除は放課後に、最低必要な人数で行うようになりました。マットや跳び箱は、最近になって使用できるようになりました。図書室の本は、借りて読んだら、72時間触らないように、別室で保管します。トイレの入り口には、消毒用のマットを敷いています。毎日、取り替えています。クラブ活動は10月から始まりました。人数が多いので、半分ずつ2週に分けて実施しています。理科の実験も10月からできるようになりました。音楽の授業では、歌唱はマスクを付けて小さな声で歌います。全校で集まる朝会や集会は、ZOOMなどで行われています。授業中のグループごとの話し合いはしていません。マスクは当然、一日中付けています。あまり外さないのは、置く場所がないからだそうです。

中学校は、7時間授業をしている学校もあります。学校ごとに入室のルールを決め、体温チェックは玄関で行い、体調が悪い生徒は入室できません。校舎に入ったらすぐに手洗い、うがい、顔洗いをするそうです。細かいルールはだいたい小学校と同様です。教室などの掃除は箒を使わず、吸着ウエットシートなどを使っているところが多いです。今年の修学旅行はほとんどの学校が中止になってしまいました。

文部科学省はマニュアルの中で、 床は通常の清掃活動の範囲で対応し、特別な消毒作業の必要はないこと。 机、椅子についても、特別な消毒作業は必要ないが、衛生環境を良好に保つ観点から、家庭用洗剤等を用いた拭き掃除を行うことをあげています。トイレや洗面所も、通常の清掃活動の範囲で清掃し、特別な消毒作業の必要はないとしています。学校の新しい生活様式は、日ごとに更新され、コロナと正しく向き合う学校を示しています。日本国内は、感染者が微増傾向にあります。小中学生の感染者も多いのですが、家庭での健康観察がよく行われるようになり、学校再開以降、体調が悪いまま登校する児童生徒は、少なくなったそうです。

学校は多くの子どもたちと大人が集まる場所です。子どもたちの笑顔と歓声を一日も早く取り戻したいと願うばかりです。

学校だより 10月24日

学校だより

校長 冨岡尚生

10月16日の公開以来、わずか3日間で興行収入46億円を突破し、動員数は342万人を記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。歴代の日本映画の興行収入でも上位に入ることは確実で、今一番の日本のトレンドです。過去のアニメ作品を挙げると、第一位は「千と千尋の神隠し」(2001)で2352万人が観て、308億円の興行収入をあげたそうです。第二位は「アナと雪の女王」(2014)で2003万人が観て、252億円。第三位は「君の名は。」(2016年)が続いています。

この「鬼滅の刃」、どうして流行っているのか、興味深いアンケートがあります。鬼滅の刃がおもしろい理由として、キャラクター、ストーリー、世界観、設定が挙げられています。そこで、この作品の世界観に着目してみました。

舞台は大正時代の日本。主人公の竈門 炭治郎(かまど たんじろう)は、亡き父親の代わりに家族の大黒柱となり、炭を売りながら生計を立てて暮らしていた。ある日、炭治郎は町まで炭を売りに行って家に戻ると、家族は無残にも「鬼」に惨殺されていた。そして唯一生き残っていた妹の禰豆子(ねずこ)は、鬼に変容を遂げてしまっていた。炭治郎は、禰豆子を人間に戻すため、また家族を殺した鬼に復讐するため鬼狩りへの道へと進む物語です。

全編を通して、家族愛と兄弟愛が描かれています。主人公、炭治郎の家族が鬼に惨殺され、かろうじて鬼となって生き残った禰豆子は、本能的な鬼の習性から炭治郎に襲い掛かりますが、炭治郎は決して妹を見捨てることはありません。禰豆子に、「頑張れ」と何度も何度も呼びかけます。自分の大切な家族は、命をかけて守るという覚悟があります。また、敵であるはずの鬼も例外ではなく、元々人間だった頃は大切な家族がいて、死ぬ直前には走馬灯のように昔の思い出がよみがえり、幸せだったころの記憶に涙しながら、朽ち果てていく様子が描かれています。

この作品の世界観に、共感が多いのは10代と40代の世代です。この親と子の世代に共感が多いことは、偶然ではないと思います。働き盛りの親、独り立ちをしていけるようになった子。映画館に別々に行っても、双方が涙するシーンは同じ場面です。

「死ぬ」とか「殺す」とか過激な言葉が飛び交う作品ですが、家族愛はもちろん、優しさや自己肯定感、仲間の大事さ、努力、そして悲しさから立ち上がる心の強さが随所に描かれています。

先週、小学2年生のオンライン授業に参加しました。国語では「お手紙」を学習していました。ご家庭でも子どもたちの音読に、保護者の皆様が聞き役になっていただいていることと思います。アーノルド・ローベル作の「ふたりはともだち」にある、5つのお話の最後の作品です。仲良しの「がまくん」と「かえるくん」のふたりの間で繰り広げられるエピソードは、可愛らしくて、濃くて、ちょっぴり切ないものです。ふたりのキャラクターや、それぞれのやり方でお互いを思いやる様子が、この作品の世界観となっていきます。5つめの「お手紙」だけではなく、他の作品を読み、繰り返し表現される作品のテーマに気付くことによって、物語の世界観はどんどん広がり深まっていきます。

どんな作品でも、親子が一緒に読み味わい、世界観を共有できる。こんな素晴らしいことはないと思います。

※映画「鬼滅の刃」は、日本ではPG12の作品となっています。